マーケティングで成果をあげるためには「顧客志向」が重要です。一方で、情報があふれかえる現代において、顧客が本当に必要な情報を必要な時に届ける「ライトタイミング・ライトコンテンツ」の実現は容易ではありません。
BtoBビジネスにおいて、顧客志向のマーケティングを実現するうえではデマンドセンターの構築が重要であり、その際のキーワードとして「Always On」があげられると同ブログ内のBtoBのデマンドセンターとは?今こそ顧客志向の仕組みづくりが必要な理由では解説しました。
今回は、そんなAlways On型マーケティングの全体像について、MAやSFAを活用しつつ取り組む方法について論考します。
目次
情報にあふれるものの自分が本当に欲しい情報は少ない
総務省が公開している「情報通信白書」によると、日本国内で流通するデータ量は2017年から2022年までの5年間で3倍にもなったと判明しています(( 経済産業省「情報通信白書」https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r02/html/nd131110.html ))。ここから分かる通り、現代においては情報が溢れかえっているのです。
しかし、その一方で「欲しい情報はほとんど見つからない」と感じている方は多いのではないでしょうか。
実際に、各チャネルにおいてオンライン/オフラインを問わず情報が発信される状況下では「自分に合う情報がない→情報がないから自分の仕事上における問題を解決できない」といった状況もたびたび発生します。
そのような背景を踏まえ「顧客が何を求めているのか」について目を向けると、それは「自分に合った情報に絞って発信して欲しい」とのニーズを抱えているとも言えます。
そこで企業として、適切なタイミングで顧客が欲している情報を届けようと考えた際に重要になるのが、前述したライトタイミング・ライトコンテンツであり、 Always On型のマーケティングです。
Always Onの考え方
「Always On」 の意味について、Oxford dictionary を参照すると「of or connected with an internet connection that is available to use at any time (インターネットと接続し常時利用可能なもの)」とあります((Oxford Learners Dictionaries https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/definition/english/always-on?q=always+on ))。
ここから読み解くと、Always Onマーケティングとはデジタルテクノロジーを使いながら顧客接点を構築しつつ、常に自社で顧客対応ができるマーケティングの仕組みと定義できるでしょう。
BtoB マーケティングの理想と現実のジレンマ – 顧客視点 vs 自社視点 – の記事でも述べた内容ではありますが、常に顧客接点が存在する仕組みを構築しようと考えた場合、顧客接点だけではなく社内体制を整える必要が出てきます。
構築できた接点に対して、常時社内の人材が張り付いて、ケースバイケースで対応することは非現実的です。
そのため、MAやSFAに代表されるデジタルマーケティングテクノロジーを活用しつつ、マーケティング・インサイドセールス・営業部門が情報を連携しながら、最適な体制で顧客と向き合っていく必要があります。
そこで求められるのが「顧客に対するマーケティングプログラムの自動化」です。具体的に言うと、それは生み出される見込み顧客(リード)に「誰がどのように対応していくのか」を考えることであり、そのうえでは本ブログでもたびたび登場している「リードマネジメント」の自動化が重要となります。
Always On Programとは?
以上を踏まえたうえで、 Always On型のマーケティングプログラムの全体像について、具体的に解説します。
まず、Always Onを構成するマーケティングプログラムで一番重要な考え方は、前述した「ライトタイミング・ライトコンテンツ」です。
冒頭でも述べている通り、顧客が必要としている情報を、いかにして適切なタイミングで提供するかについて考えていかなければなりません。
デジタルマーケティングにおいては 、BtoB と比較するとBtoCの方が洗練された顧客体験を提供している傾向があります。Amazon、Netflix、Uberなど、海外の先進的企業を中心に、機械学習などを活用した高度なパーソナライズがサービスやマーケティング施策に組み込まれています。
しかし、商談サイクルが長くなりがちなBtoBにおいては、営業にも工数がかかるため、マーケティングに対してそういった“投資”が充分にできないのが実情でしょう。
MAを活用したAlways On Programの推進方法
一方で、BtoBビジネスでもプロジェクトを推進するのは一個人であり、プライベート空間で BtoC の洗練された顧客体験をすでに体験しているという側面もあります。そのため、近年ではBtoBにおけるマーケティングに対する期待値は上昇傾向にあると、BCG社(ボストン・コンサルティング・グループ)によって指摘されています((ボストン・コンサルティング・グループ「Building a Better B2B Demand Center」https://www.bcg.com/ja-jp/publications/2018/building-better-b2b-demand-center ))。
BtoBはBtoCと比較して商品単価が高いのが一般的ですが、それでも Always Onにおける考え方は変わりません。最も基本的なこととして、「自分の送りたい情報を送るのではなく、顧客の認知行動に沿った形で情報提供していく」との意識が重要です。
そこで、MAを活用してAlways Onを実現しようと考えた際のプログラムの全体像としては、以下のようなイメージになります。
上図について解説すると、まず顧客との初接触ではご挨拶から入るのが当たり前ですので、自社MAのデータベースで流入した顧客には「WELCOME(ウェルカム)プログラム」の形で、今後情報提供する旨や自社紹介を送ります。
次に、会社の具体的な紹介として「イントロプログラム」を活用します。ここでは、自社サービスラインナップの周知が目的です。
その後、顧客の興味関心に基づいてソリューション群や具体的な製品の紹介をしていく過程を経て、具体的なスペックの紹介に入る。このようなプログラムの全体像を描くことがAlways On Programでは重要になります。
ここで大切なのは、上図にある「分岐点」を判断する材料は「データ」であることです。例えば顧客がクリックしたメールやWebの閲覧履歴などの行動情報があげられます。
さらに、職位にかかわる情報がMAのデータベースに取り込まれていれば、「経営者には経営層向けのメッセージを流す」といったことも可能になります。
顧客接点だけではなく自社のフォロー体制も重要
Always Onでは、ただ顧客への情報発信に注力すればいい訳ではありません。リードマネジメントの側面に立って考えてみれば、接点を持った顧客は常にコンバージョンしてくる可能性があるためです。
そのため、コンバージョンに至った顧客に対してどのように社内で対応していくのかも定義しておく必要があります。例えば、地域に応じて違う営業がアサインされているとするなら、コンバージョンに至った顧客の振り分けをどうしていくか。あるいはどのタイミングで営業にリードを渡していくのかなどがあげられます。
そういったフォロー体制の構築で求められるのが、顧客の購買活動とそれに対応するマーケティングプログラムを設計することと、それに対して具体的に「どのような属性の顧客がどんな反応をしたら、誰がどう対応するか」というルール作りです。
言い換えると、リードのステージの定義をしつつ、各ステージのリードに対応するフローや具体的なアクションを事前に決めておくことといえます。
MAやSFAを活用することで、これらの事前に定義した業務フローを自動化するプログラムを構築することができます。
こういったデジタルツールを活用した自動化の例としては、MAの「リードスコアリング」の機能が代表的です。リードスコアリングとは顧客の会社や所属などのプロファイル情報と、顧客の自社への興味具合を総合的に点数付けして可視化する機能となります。
この機能を使えば、より自社と親和性のある顧客を可視化し、フォローアップの優先順位を設定し、スコアリング作業を自動化していくことが可能です。リードスコアリングの具体的な解説は下記の記事でしていますので、合わせてご参照ください。
リードスコアリングとは何か?基礎知識や方法論を解説
リードスコアリングを機能させるための部門間連携・データ戦略とは?
Always Onは全てがデジタル上で完結するわけではない
ここまでデジタルツールを用いた Always Onについて解説してきましたが、一方ではプログラムの全てがデジタルで完結するわけではない点に 、BtoBビジネスの難しさがあります。
自社視点でどれだけライトタイミング・ライトコンテンツの情報を顧客に提供したとしても、顧客側はそれらの情報を整理し、各関連部門と調整を取り、自分たちのプロジェクトないしはイニシアチブ達成に向けて動かなければなりません。
そのため、こういった顧客と実際に寄り添い、生の声を聞きながら相対して対応していくリアルな活動が営業には求められます。こういった活動を行う際には、営業が本来やるべき活動やコア業務に割いているリソースを投下する必要があります。
とは言え、営業もマーケティングもリソースは有限ですので、各部門が実際に取り組む内容を優先順位付けすることが求められるでしょう。
例えば、マーケティングであれば顧客への深い理解を持った上で、 Always Onの全体像を企画し、実行していく。営業であるなら、受け取った情報に関する社内調整が必要な顧客に寄り添いながら、最適な提案をしていくといった活動です。
Always OnではMAを活用するため、MA(マーケティング・オートメーション)で自動化を果たすための3つのポイントでも解説している通り、ビジネス面・システム面の整合がとれている必要もあります。
以上を踏まえたうえで、 Always Onの目的は、“今あるもの”の効率化だけではないと言えます。
それは、従来はフォローしきれていなかったり、見込みであると感知できていなかったりした新たな顧客に対して、デジタルテクノロジーを活用して開拓していく。その上で、本来であれば注力したい潜在顧客層の開拓を行える体制を整えるための試みとも言えるでしょう。
マーケットワン・ジャパンでは、Always On Programの全体像、「WELCOMEプログラム」などの詳細に関してはまとめた資料を作成しています。 Always Onについてより詳しく知りたい方は、コンテンツ一覧からダウンロードが可能です。
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