「営業がマーケティングのリードをフォローしてくれない」
「リードデータをスコアリングや分析に活用したいものの、データが汚く使い物にならない 」
このような悩みはMA(マーケティングオートメーション)やSFAを活用しているマーケターにとっては珍しいものではないでしょう。
こういった問題が発生する原因は、そもそもとして「取得すべきデータが何か」「どのようなデータの取得方法であればそれを活用できるか」について考慮したうえでのシステム仕様や運用方法が構築されていない点にあります。
今回はこのような悩みを解決するために必要な、BtoBマーケティングにおける「リードプロファイリングの概念」に関して解説します 。
リードプロファイリングとは?
そもそも「プロファイリング(Profile)」の定義については、 Oxford dictionaryを参照すると「有益な情報を付与する説明 (a description of somebody/something that gives useful information)」と記載されています((Oxford Learners Dictionaries https://www.oxfordlearnersdictionaries.com/definition/english/profile_1?q=profile))。
マーケティングにおいて、「そのリードがホットか否か」というリードの質ついての認識に齟齬があると、冒頭で述べたように「営業がマーケティングによって掘り起こされたリードをフォローしてくれない」状況に陥ります。
そのためマーケティング活動では、リードをパスする上で前提となる、「ホットなリードの条件は何か」「どんな情報が付与されれば有益と言えるか」についての認識が、部門間で取り決められている必要があります。
つまり、リードプロファイリングとは、「自社にとって有望なリードかを判断するうえで、どんな情報/データが有益かが定義されたもの」といえます。
リードプロファイリングが重要な理由
BtoBマーケティングにおいて、リードプロファイリングの定義化は非常に重要な意味を持ちます。
そもそもマーケティングが営業から「必要なリードが送客されない」と言われてしまうのは、本ブログでもたびたび述べている通り、前提となる営業・マーケティング間で必要なリード条件の擦り合わせがなされていないことに起因します。
求められるリードの質について具体的に定義しないまま、マーケティング活動を進めれば、マーケティング視点ではどれほど有意義な活動をしたとしても、共通のゴールが描けていないため営業の要望には応えられません。
そのためにも、事前にリードプロファイリングを作成しておく必要があります。その最初のステップとしては、営業・マーケティングともに今後活動していくうえで必要な情報を定義するプロセスが必要です。
例えば「どんな会社がターゲットなのか」「それらはどんな業界なのか」「アプローチするリードはどんな役職者で、どんな部門に所属しているのか」といった事柄となります。これらを事前に連携していけば、部門間の認識の齟齬は解消されるでしょう。
さらに同ブログのMA(マーケティング・オートメーション)の全体像とは?自動化を成功させるための必要知識の記事でも述べている通り、MA・SFAといった複数システムを連携しながら運用しなければなりません。
MAで取得できるデータは、顧客が入力するWebフォームなどに代表される通り、不特定多数の流入経路があります。さらに、営業が入力する データはSFAに蓄積されますが、MAとは異なるユーザーがデータのインプットを続けてしまうと、各ツールのデータがそれぞれのデータベースを「行ったり来たり」する状況になります。
このような状況でシステム間が連動していなければ、営業・マーケティングでせっかくデータを定義しても、データの一貫性を保てず、データの利活用ができなくなります。
多くのマーケティング活動は、MAやSFAといった「データベース」に支えられています。そのため、リードプロファイリングを明確にするだけでなく、それをデータセットレベルに落としていくことが活用していくうえでの課題となります。
なお、営業・マーケティングが連携をしていくうえで前提となる「ターゲット」の考え方は下記記事で解説していますので、あわせてご参照ください。
3つのコンセプトで考えるBtoBマーケティングのペルソナ設計
リードプロファイリングはどのように作るのか?
リードプロファイリングを作成するためには、前提として「必要な項目は何か」「その項目はどのような情報で成り立つか」の2軸で考えます。
MAやSFAなどのデータベースレベルに置き換えると、「フィールドは何か」「フィールドに含まれるべき値は何か」と言えます。それらを踏まえたリードプロファイリングの作成工程のイメージは、以下のようになります。
まずフィールドを考える際には「そもそもどんな情報が必要なのか」「どのような業界なのか」「対象企業の売上規模はどの程度か」など、自社が求めるターゲット顧客像を具体的に勘案します。そのうえで、それらをデータレベルに落とした時に、どのような項目が求められるかについて、体系立てていく必要があります。
さらには、フィールドの形式(タイプ)も重要です。アンケートのように、顧客が好きな情報を入力できるアンケートフォームなどでは、多くの場面でテキストフィールドが使われます。しかし、そのような場合には、事前に定義したプロファイリング通りにデータが入力されるとは限りません。
MA(マーケティング・オートメーション)で自動化を果たすための3つのポイントで触れているとおり、例えば「技術者」を意味するデータだけでも100通りものパターンが存在するケースも往々にしてあります。
そのため、プロファイリングをタイトにするうえでは、多くの場面で直面する煩雑な入力データに対するドロップダウンリストの作成が重要です。マーケットワンでは定義化したフィールドの値の一覧を「LoV (List of Values)」と呼んでいます。
例えば、顧客ニーズがリードをプロファイリングするうえで求められる場合は「自社の製品に対する具体的なニーズがどのようなものか」について、選択式形式でもれなく洗い出さなければなりません。 また、マーケティングが複数の製品を管轄しているケースでは、その製品群の一覧を作成する必要もあります。
こういった作業は非常に労力がかかりますが、リードプロファイリングにおいてはこの工程が最も重要です。
加えて、データを入力する顧客次第では、各値に対するブレが生じる可能性も踏まえておかなければなりません。
例えば、上図の職位の項目で「一般社員」「課長」「部長」と定義しているとします。これを名寄せなどでカテゴリ分けする際、とある顧客の名刺に「主任」と書かれていた場合、一般社員と課長のどちらにカテゴライズすればよいか、判断がつかなくなります。
そのような状況を避けるためにも、リードプロファイリングではLoVだけでなく、LoVに各データを振り分けるためのロジック組みも必要になる場合があります。
リードプロファイリングの発展性
以上の通り、リードファイリングはあらゆるマーケティング施策の基盤となるものです。プロファイリングを行い、プロジェクトのゴールから逆算した必要情報を定義すれば、営業・マーケティングの連携を強化できます。
「リードの送客」「コンテンツ配信」などのマーケティング業務は、本質的には顧客に情報を届け、そこから得られた行動情報やフィードバックといった“情報”を他部門と共有し、活用することにあります。
リードに関する情報を体系立てて保持することで、データ活用の発展に繋がります。リードプロファイリングを起点とした施策としては、例えば「メールのセグメンテーション」「それに伴う各データをもとにしたパーソナライズ」「データを活用したリードスコアリング」などがあげられます。
さらに、分析をするためにはデータの一貫性も重要です。パーソナライズを判断できるデータセットがあれば、よりライトタイミング・ライトコンテンツな配信ができるため、“顧客志向”の施策にも繋げられます。
このように事前の定義化をしっかりとすることで、データ分析の際によく言われる「Garbage in, Garbage out (ガーベッジイン・ガーベッジアウト) = ゴミからはゴミしか生まれない」の状態を防ぐための仕組み作りも加速できるでしょう。
■注釈