なぜABM(アカウントベースドマーケティング)は製造業と相性がよいのか?(5) - 実践編:ABMに必要な情報取得のモデル化 - | MarketOne

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なぜABM(アカウントベースドマーケティング)は製造業と相性がよいのか?(5) - 実践編:ABMに必要な情報取得のモデル化 -

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ABMを実行するうえで取得する情報の定義

ABMを実践している製造業企業は多いですが、一概にABMと言っても既存製品を売るためのABMから、取引先や社会に必要とされるニーズの具現化のためのABMまでさまざまな目的があります。そしてそれぞれに「目指すべき目標」は異なり、その目標の違いによって取得する情報も大きく変わってきます。 

そして、ABMを実行するうえで取得すべき情報と情報を取得する相手は、ABMにおける三方よし(*1)の「自分よし」と「相手よし」の場合で異なります。(*1)ABMにおける三方よしについての解説はこちら 

自分よしのABM 相手よしのABM
ABMの目的 製品中心:良いものを作って売る販売促進が中心 顧客志向:顧客の求めるもの・ニーズ収集を重視し、ニーズ起点にて差別化された製品を製造販売する
主として取得する情報自社の既存製品を買ってくれる相手の予算や品質に関するニーズ 狙っている企業や部門の困りごと、今後の開発の方向性、製品に求めるニーズ
情報の取得先 製造部門、購買部門の担当、課長が中心 設計、開発、研究部門の部門長、経営陣
情報の方向性 基本的に、拡販のための製品情報を自社から見込顧客へ提供 先方の顕在、潜在ニーズを引き出すことが中心
自社のCRMに貯められている情報 既存製品に興味を持っている相手の状況、ニーズ 自社が製品提供可能な領域のクライアントの顕在、潜在ニーズ
自社内の情報の活用部門 主に営業、マーケティング部門、製造部門 営業部門、マーケティング製造部門に加え開発部門、経営陣

「目指すべき目標」「現状」=「目標を達成するために埋めるべきギャップ 

これは、目標を達成するために必要な「ギャップ」を算出する一般的な考え方になりますが、ABMにおいても有用な考え方です。  

ABMの現状把握 

まずABMにおいて誰から、どんな情報を取りたいのかを「定義」しどんなことをABMで実現したいのか(目標)を定めることは、ABMを実行しようとするほとんどの企業で実施されているかと思いますただ、そこから現状を把握し、「具体的な目標数値(KPI)」を設定し、目標に対する進捗を定点観測できている企業は多くないというのが筆者の実感です。 

完成品に組み込まれる素材や部品を作っているメーカーは自社の製品がクライアントの製品に組み込まれ、その組み込まれた製品が開発量産されて初めて自社の売上につながるため、製品の売り込みから実際に売上が立つまでに37年程度の時間を要することも少なくありません。そのような企業ではマーケティング活動からすぐに受注、商談化につながるわけではないため、商談をできる部門を見つけ、その部門のキーマンのニーズを把握するという商談の前段のプロセスをいかに抜け漏れなく行うかが重要になってきます。 

弊社では、商談化につながり売上に貢献するABMを実践するための、下記のようなフレームワークを提唱しています。 

まず、横軸に「どの企業をターゲットにするか=Targeting」、「情報を取得すべき部門をどの程度まで把握できているか=Coverage」、「どんな情報を取得できているか=Status」、「継続的な情報収集、提供ができているか=Frequency」の4つの要素を置きます 

ABMフレームワークの4フェーズ

そして、縦軸には3つのStepを置きます。Step 1とStep 2で「現状把握」を行い、Step3で「目標を達成するために埋めるべきギャップ」を埋めていきます。

ABMフレームワークの4フェーズと3つのステップ

ここから具体例をもって解説します。

Step 1で目標を具体化する作業である「定義」「ルール策定」を行います例えばターゲット企業の「売上」「業種」「所在地」「従業員数」などを定義し、条件を設定します。

Step 2の集約見える化プロセスで、上記の設定した企業の抽出条件をもとに東京商工リサーチなど企業データを提供している会社より、「具体的なターゲット企業名を抽出し、その抽出したターゲット企業を自社のCRMで照合し、本来狙うべきターゲット企業のコンタクト、ニーズ情報がどの程度まで把握できているのかのような現状把握を行います

Step 3で、目標と現状のギャップを埋めるための最適化、拡充を行います。

商談前のプロセスの見える化

筆者の経験で言えば、ABMを掲げている多くの企業は、上記のモデルのような「目標の具体化」「現状の把握」「埋めるべきギャップの明確化」を行わずに、展示会への出展やwebキャンペーン、コンテンツの制作など各種の施策にいきなり走ってしまっているように思います。そして、そういった企業は決まって、少し時間がたった時に「でABMの進捗ってどうなってるの?」「いつになったら結果が出るんだっけ?」というような質問に答えられなくなるケースに陥っています。 

前述したように、素材、部品メーカーにとってはそもそもの商談サイクルは非常に長く、製造業にとって商談化、製品採用に至るまでに製品の性能はもちろん、信頼性、生産キャパシティ、会社としての信頼など多くの要素を積み上げていく必要があります。どんなマーケティング活動を行おうとも、商談サイクルの最後の段階で自社がいきなり商談に参加できる=短期間での商談化パイプライン化を行うことは非常に難しいのではないでしょうか 

特に、今買ってくれる相手を探すプロダクトベースドのマーケティングではなく、この相手企業が何を買ってくれるのかを探すアカウントベースドのマーケティングにおいては短期間で成果の出るマーケティング施策を継続的に行っていくことは非現実的といってもよいでしょう。 

そうなると成果が出ないとみなされるマーケティング活動には企業としても継続して投資することは難しくABMの活動も尻すぼみになってしまいます。 

短期間で案件化、商談化という目に見えるわかりやすい成果が出ないことを前提に、商談化の前段のプロセスを埋めるのがマーケティング施策において重要だということをマーケティングチームが理解することが重要です。そして、商談化までのプロセスのKPI、弊社のモデルで言えばTargetingCoverage、 Statusといった指標を改善していくために行っているマーケティング活動であるという理解を営業部、会社の経営陣から得ることがABMを適切な規模で長期間にわたり行うための秘訣となります 

今回は、ABMで取得するべき情報の定義、ABMを実行するうえでの目標設定と現状把握、そして商談前のプロセスの見える化がABMにおいて重要なポイントであることをお話しさせていただきました 

次回はABMにおけるマーケティングと営業のすみ分けというBtoBの世界では避けて通れない話をさせていただきます。 

 

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